秋が深まるこの時期に、あらためて
朝晩の空気がひんやりしてきて、ようやく秋らしくなってきました。これから気温は、少しずつ下がっていきますね。
冷蔵品を扱う物流の現場では、実はこれからの季節こそ気をつけたいことがあります。冷蔵輸送での事故というと夏の暑さを思い浮かべる方が多いのですが、むしろ冬の寒さで起こることがあります。そう、寒さによる「凍結」です。
インスリンや一部のワクチン、抗体医薬などの生物学的製剤、一部の液剤や点眼薬、化粧品などには、「凍結を避け、10℃以下で保存」というような書き方がされています。
お預かりした製品が、実は保管中や輸送のどこかで一度だけ凍ってしまっていた、ということがあったとしたら・・・凍ったかどうかは外から見てもたぶん分かりません。いざ使用するとき見た目はまったく普通かもしれません。でも使用してみたら効果がない、試薬なら誤った結果が出てしまう、人に使用する医薬品なら最悪の事態も考えられます。
これらは一度凍ると、見た目が元に戻っているように見えても中身は変化してしまい、廃棄せざるを得なくなります。
だからこそ、寒くなるこれからの季節に向けて、あらためて「凍結させない注意点」を確認する必要があります。
なぜ、冷蔵品が凍ってしまうのか
冷蔵で保管・輸送しているはずの製品が凍ってしまうのはどんな時なのか、参考に4つのパターンをご紹介します。
保冷剤が直接あたってしまう
いちばん多いのがこれです。凍った保冷剤などを、製品に直接くっつけてしまうケースですね。箱の中に置いた温度記録計は5℃を示していても、保冷剤に接した製品だけが0℃を下回ってしまう、ということが起こります。
「冷やすために保冷剤を製品に密着させる」という考えから起きやすいので、注意が必要です。
冷蔵車や冷蔵庫の吹き出し口の真下
庫内の平均温度はまったく問題ないのに、吹き出し口の近くだけが氷点下になっていることがあります。パレットの上の段、ファンの正面あたりが要注意です。空いているところへ順番に積んでいくと、こうした場所に入り込んでしまうことがあります。
冬の外気に、さらに冷却を足してしまう
外の気温がすでに0℃を下回っているのに、「冷蔵品だから」とそのままにしておく。待機中の荷台や、早朝の積み込みのときですね。冷蔵品にとっての敵は暑さだけではなく、余計な冷えも敵です。2℃を下回る外気温に置いておけば、当然製品も同じ温度にさらされていることになります。
冷凍品の近くに置いてしまう
めったに無いと思いますが、冷凍品やドライアイスを詰めた箱、超低温の資材のすぐそばに、2〜8℃管理の製品を置いてしまうケースです。温度は熱いほうから冷たいほうへ移動する性質があります。冷蔵の温度が冷凍品側に移動し2℃を下回ることになり。冷凍品は逆に温度が上がってしまうという事になります。
凍らせないために心がけること
凍らせないために注意しなければならないのは、突きつめると3つです。凍ったものに触れさせないこと、冷気をあてすぎないこと、そして冬は冷やしすぎないこと。これを場面ごとに整理すると、次のようになります。
| 場面 | 心がけること |
|---|---|
| 梱包 | 保冷剤が製品に直接触れないようにする。製品との間に緩衝材をはさむ |
| 梱包仕様の設計 | 冬用と夏用で保冷剤の枚数や配置を変える。 |
| 倉庫内・車両 | 吹き出し口の真下や直風があたる場所を避けて積む |
| 混載 | 冷凍品やドライアイスが入っている箱とは離す。 |
| 冬の運用 | 外気温に応じたルールを設ける(例:12月から3月は保冷剤を減らす) |
「凍結厳禁」「DO NOT FREEZE」「保冷剤の直あて禁止」と、色を変えてひと目で分かるように工夫するのも手です。
保管する前、運ぶ前に、凍らないことを確かめます
冷蔵で保管・輸送しているつもりでも、一部分だけが凍ってしまう。これを注意するだけで防ぐのは、なかなか難しいものです。そこで私たちは、保管する前、運ぶ前に「この場所、この梱包、このルートで凍らないかどうか」を確かめるようにしています。いわゆるバリデーション(検証)です。
確かめることは、大きく2つあります。
一つは、現物での実地試験です。実際に使う箱や保冷剤、仕切りの組み合わせで、夏を想定した高温での検証だけでなく、冬を想定した低温での検証も行います。凍結厳禁の製品では、むしろ冬の検証のほうが大切になります。見るのは平均ではなく、いちばん低い温度が下限の2℃を下回っていないかどうか、です。
冬場以外で実施する必要があるのでしたら、大き目の保冷バッグや発泡スチロールの中に保冷剤やドライアイスを入れて2℃以下の環境を作り、その中に実際保管する製品や輸送箱を入れて、その中に温度ロガーを入れて計測するということも出来ます(サイズによっては難しいかもしれませんが・・・)
もう一つは、輸送に関する点で、時間が長く、冬の早朝で、待機も入るような、いちばん条件の厳しいルートを選んで、実際の温度を測ります。
検証の結果は必ずお客様にご報告します。数字で実際の温度を確認していただいたうえで、問題がなければ、その仕様で本番に進みます。「たぶん大丈夫だろう」で運用を、はじめることは危険です。
さいごに
冷蔵品の品質を守るというのは、上手に冷やす技術のことだけはなく、凍らせないための工夫も必要です。
凍ってしまう原因のパターンを知っておくこと。日々の予防を丁寧に続けること。そして保管する前、運ぶ前にバリデーションを行う事、その結果をお客様にご報告してから進めること。この積み重ねが、何より大切だと考えています。
これから寒くなる季節は、冷蔵品にとって、いつも以上に気をつけたい時期です。
冷蔵品の輸送や保管でお困りのことがありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。季節やお荷物の中身に合わせた保管方法や運び方を、一緒に考えさせていただきます。


